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2025.09.11 幼稚園を襲った豪雨 vol.2|泥と乾燥・カビとの戦い…床上浸水からの”リアル復旧劇”

2023年6月の大雨により床上浸水の被害を受けたつつみ幼稚園。復旧に向けて、どのように建物を直していけば良いかの判断は、思った以上に大変だったようです。

建物の修繕をおこなった災害ボランティア団体「四番隊」のよんさんを交えて、復旧までのお話を聞いてきました。

【目次】

目に見えない被害との戦い

Q:修繕を進める上で、困ったことや大変だったことはありますか?

千葉先生:踏ん切りがつかなかったですね。素人目線だとこの壁はまだ使えるんじゃないか? と思っていても、水害なんで、壁の裏とか目に見えない場所に被害があるんです。

小川先生:電話しましたよね。「よんさん、ここなんかカビがついてる」って。

よんさん:すぐ電話かけてくんだよね。

千葉先生:水をかぶった壁でも、ちゃんと掃除すればまだ使えるんじゃないか? って思っちゃうわけです。でも、後になってカビが生えてくるよって経験のあるボランティアさんたちに指導を頂いて、踏ん切りをつけて腰の高さ辺りまでの壁を処分したんです。それでも、一部残した場所があるんですけど、やっぱり後々になってカビが生えてきちゃいました。

よんさん:俺らからすると、「だから言ったべー」ってなるやつなんだよね。

理事長:顔出して来てくださる度に、「ここカビ生えてるんで取ってください」って。毎回、何か用事を頼んでました。

小川先生:床を開けたところは、7月中は乾かしてましたよね。

よんさん:そうだそうだ。

小川先生:ずーっと乾かしてたけど、土が湿っててなかなか乾かなくって、毎日窓を開けて風を通しても乾かないから、もうさすがにダメだってなって。

千葉先生:ずっと湿ってるんですよ。ここら辺の地盤の中で1番低い建物らしいので、他の田んぼとかが水を使い始めると結局水がこっちに来ちゃうんですよ。

小川先生:だから、砂利を引いて、基礎からみんなでやり直したんです。

―― えー、基礎からですか!? それは大変でしたね。

復旧までに迫られる膨大な数の決断

Q:復旧までの間、幼稚園ならではの苦労話があれば教えてください。

千葉先生:園生活を送りながらの復旧なので、それが大変でした。園庭を工事するよってなると、結構長いあいだ園庭が使えないし、お部屋の工事となればお部屋が使えない、、、って言うのが、ひっきりなしに来るので、じゃあこの行事はこっちにずらそう。こうしよう、あーしようって調整が大変でしたね。

よんさん:俺が申し訳なかったなって思うのが、結局土日しか入れねぇから、なかなか作業が進まなかったでしょ? あれはちょっと、長引かせてしまって申し訳なかったなとは思うんだけど。

千葉先生:こっちとしては月から金まで考える時間ができて良かったですよ。次は何を頼もうかなぁって(笑)

小川先生:直してもらいたい場所、探しに周ってたよね。

理事長:私はわからないから、もう、すぐに甘えちゃって、、、

―― その甘えるってのが、(双葉の)自治会長さんからお話しを聞いてても出てきたワードで、実は大事なポイントなんじゃないか?と思ってるんです。(関連記事:自治会長×四番隊 ― “遊び場”のように築いたボランティアとの本物の信頼関係

よんさん:ただ俺らとしては、被災者の自立を促すって意味でも、あんまり入り込み過ぎでも本来はダメで。ちょっと、そこが難しいとこなんだよね。

千葉先生:なんかもう、結構何事もなあなあで進んでって、ここまでできたので、、、被災直後は、理事長は来園された方との挨拶につきっきりになるんです。指示する人がいないんですよ。でも、多分理事長もどうしていいかわからない。自分もわからない。こうした方がいいかな、ああした方がいいかな? って思うけど、○○さんと話してるから今は聞きにいけない、とか。そういう時に、ボランティアさんからこうした方がいいよってアドバイスは助かりましたね。

理事長:次、次、次、次、皆さんいらして下さるから、やはりちょっとお話しすると時間とっちゃう。だから、片付けとかほとんど関われないんです。千葉先生も何がなんだかよく分からない状態で、よくやったと思います。

―― お話を伺っていて、いろんな決断をしてきたんじゃないかな? って感じますが、この1年間の決断の数はもの凄いんじゃないですか?

千葉先生:そうですね。それは凄かったですね。やっぱり、決めた先の責任が重いのが目に見えて分かるので。決断1個1個も結構危ないものばかりでしたね。資金があれば良いんでしょうけど、そうもいかず。

よんさん:さっきのカビの話だって、最初「切ればいいのに、コレ」ってずっと言ってんのに、「いや、ここは」って聞かなくて。結局カビが生えてきて、最終的にやり直したもんね。

千葉先生:それも板挟みなんですよ。自分が間に入ってたんですけど、施工業者さんに聞くと「そこはそのまま使えますよ」って言う訳ですよ。でも結局ダメだったって事があると、正直、誰を信用していいのか最初は分からず、何を優先すれば良いかもわからず、決定する人に聞いても、水害初めてで分からない。それが難しいところでしたね。

よんさん:ただ、俺らも正直賭けなわけ。切った方が絶対いい。でも、もしかして万が一にも大丈夫かもしれない。大丈夫なのに切ってしまったら、それは俺らの責任になる。でも、絶対に切った方がいいはずだって、今までの経験が言っている(笑)

理事長:切ってないところは、本当に後からカビがわーっと出てきて。

千葉先生:だから、やっぱり経験者の話が1番正解。分かんないから企業に頼んじゃえばいいって思っても、企業も災害復旧のプロでは無いんですよね。やっぱり災害に関してはいろいろと別口になってくるんじゃないか? って思いました。

理事長:ボランティアさんも、始めはこの人たちはどこまでできるのか分からないんです。他所からわーっと来ているので、どなたかもわからない。

よんさん:やっぱね、1か月とかずっと入ってれば信用も出てくるし。俺らがやってる作業を見ててもらっているうちに、分かってくれればね。

千葉先生:社協が入れてくれたボランティアさん、バスで来て、バスで帰っていく。その中に、もう直でここに来ていいか? って言うひとも結構いたりして。それも、良いのか悪いのか、、、だから、限りなく選択はありましたよね。結局ここまで来れましたけど、、、

Q:被災の経験をしたことで、他の園へのアドバイスなどはありますか?

千葉先生:何を伝えたら良いのか、、、あれもこれも、伝えたいことがたくさん。

よんさん:普段から徳を積んでおけ、みたいな(笑)

理事長:でも、知らなかったんですよ。こういう方(災害ボランティア団体)がいるということを。今まで頼むことが無かったからってこともあると思うんですけど、経験になりましたし、すごい助かりました。

千葉先生:確かに我々と同じで、災害ボランティアって知らない人は多いと思います。一般的なボランティアは分かりますけど、ボランティアの団体、災害に特化した団体があるってことまでは、多分みんな知らないんじゃないかな。そのボランティアさんたちの意見は大切にするのが良いと思いますね。

やれば良かった、クラウドファンディング

Q:資金の確保という面では、何か活動をされましたか?

千葉先生:この災害、結構大きかったみたいで、日本財団さんとか、ピースボートさんから寄付してもらったんですよ。

よんさん:へー、そうなんだ。

千葉先生:他にも、うまく言えないんですけど、やっぱ子供に対するものだと皆さんが補助してくれるんです。

よんさん:うんうんうん。そうだよね。

千葉先生:でも、いざ被災してみると、欲しい物って子供が使う物では無い物が多いんです。例えば、先生のロッカー、椅子、パソコン、iPadだったり、そういう、直接保育には関係はしてないけど、保育の役に立っている物には支援が無いんですよね。「子供に対する物なら支援できます」って、子供の絵本とかおもちゃとかで、それはそれで必要ですけど、やっぱり今すぐ必要なのって、市からの書類をまとめるパソコンだったりプリンターなんです。

よんさん:助成金のサイトにはいろんな助成金があるんだけど、やっぱ、子供関係ってすごい多いんだよね。

千葉さん:そう! そうなんですよ。でも幼稚園はなかなか難しいところが多い。

よんさん:どっちかって言うと、NPOとかの団体の向けのやつだからね。

千葉先生:でも、そんな助成金とか寄付をしてくれる団体のリストがあったら嬉しいですね。自分で探しても全然見つけられなかったんです。補助だと自分たちで一度払わなきゃならないですけど、全然そんな余裕はないと思うんですよ。日本財団さんみたいな寄付が一番ありがたいですね。

理事長:楽器なんかも全部ダメになってしまったんです。太鼓とか鼓笛とか。

よんさん:楽器なんて、どっかで寄付してくれそうだけどな。例えばヤマハとか。そう言うのは企業の方が良いかもしれない。

千葉先生:なかなかそういうところまで考えられなかったですね。

よんさん:あとは、キャッチーだからいけたろうなぁって思うのがクラファンだね。あの時期にクラファン立ち上げてたら1,000万円位いけたんじゃねぇかな。

千葉先生:やり方がわからなかったんで、延ばし延ばしでここまできちゃったんですけど、、、話し合って、結局我々がリターンできるものって何だ? ってなって、そこで止まったんですよね。

よんさん:もう、寄付型のクラファンにすれば良かった。もうリターン無いです、で。しかも災害系は全部入ってくっから。

千葉先生:そうだとすると、クラウドファンディングを手伝ってくれるボランティアさんとかがいらっしゃると嬉しいですね。

よんさん:そういうボランティアもありなんだよね。支援も現場だけじゃなくて、バックオフィスの支援をしてくれるメンバーってホントに必要なんだよね。

千葉先生:当時は現場で手一杯なので、そういった支援をしてくれるのはありがたいですよね。決断する時に安心して頼れる存在がいてくれるとありがたいです。

まとめ

水害は、目に見えない場所にも被害があるので、ただ表面をきれいするだけだと後々カビが生えてきて、余計に時間がかかるようです。また、災害対応をしたことがない業者さんだと、その判断も難しいようです。

どこまで工事をするか? といったことを素人が山のように判断し決断していく、、、相当な負担がかかると感じました。しかも、その最中に補助金の申請という激務が襲ってくる。途中で心が折れちゃう人、かなりいるんじゃ無いでしょうか?

資金に余裕があれば、その判断も少し気が楽になるのだとしたら、クラウドファンディングを活用するのは良いことだと感じました。とは言え、クラファン未経験だと、つつみ幼稚園のようにどのサイトを利用するのが良いのか? リターンはどうするのか? 悩むことは更に増えそうです。

「災害ボランティア」と言うと、現場で汗水たらして作業する、というイメージが先行しますが、クラファンの運営を手伝うなど、今の時代は遠くの地からでも支援できる方法があるのだと感じました。

今回、つつみ幼稚園さんから伺ったお話しは、幼稚園や保育園が被災してしまった時に役立つ情報が満載でしたので、まとめの記事を作ってみようと思います。

つつみ幼稚園の皆様。今回は貴重は機会をありがとうございました。


<取材協力>

斎藤啓之

執筆者:斎藤啓之

1980年生まれ
両親の出逢いはテニスコート。男3人兄弟の長男で、3世代で暮らし、友だちから「サザエさんのウチみたい」だと言われるような家庭で育つ。
料理は全く出来ないが調理師免許を持っており、味噌が変わると判る味覚をもつ。
剣道の有段者なので、棒で人を叩くと逮捕される。
趣味は、高3の秋から始めた野球。甲子園を目指したことの無い野球人。
ほとんどの人にA型?と聞かれるO型。

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