2023年6月に大雨による川の氾濫によって被害を受けた茨城県取手市にある「つつみ幼稚園」にインタビューをさせていただきました。
その中で、普段から子どもたちの命を守る訓練は行っていたが、助かった後の復旧までは考えが至らなかったというお話しがありました。
保育園や幼稚園は施設が地震・台風・集中豪雨などの大規模災害で被害を受け、その災害が激甚災害に指定されると災害復旧補助金の対象になります。補助金があることは良いのですが、補助金の請求には非常に苦労をしたそうです。
これから先の未来で被災してしまう保育園や幼稚園が、復旧に向かう中で役立つ情報が満載のインタビューだったので、重要なポイントをまとめました。
【目次】
補助金の申請について
補助金申請のポイントは5つです。
①とにかく写真を撮る
補助金を申請するには、被害に遭った物を処分する前に写真で記録に残す必要があります。それは、えんぴつ1本からという噂もあります。つつみ幼稚園では、写真を撮る前に処分してしまった物については補助金がもらえなかったそうです。
どのような写真を撮れば良いのか、具体的なアドバイスが無かったので手探りでの資料作成。「窓ガラスが100枚割れたら、100枚の写真が必要と思った方が良い」と千葉先生は仰ってました。
でも、えんぴつなど、被害品1つにつき写真を1枚ずつ撮るなんて現実的ではありません。まとめて撮影しても良いのか?と聞くと、今でも分からないと・・・
ただ、写真は撮りすぎという事は無いので、たくさん撮影しておくことに越したことはありません。(でもその分整理が大変ですよね)
②3社の見積もりが必要
補助金を申請するためには、3社の見積もりが必要です。それは、建物の修繕だけでなく、細かい備品なども。
つつみ幼稚園では、Yahoo!、Amazon、楽天で見積もりを提出したら、異なるECサイトでも同じお店の資料があり、これではダメと言われて資料を作り直したそうです、、、同じECサイトであっても良いので、異なる会社の見積もり(金額の分かる資料)を用意しましょう!
ボランティア団体さんによっては、どのように3社の見積もりを用意すれば良いかまで相談にのってくれる人もいるそうです。このような人が現れたら、絶対に協力してもらいましょう!!
③水害を知っている会社の見積もりを提出すること
建物の修繕のお見積りには、地元の業者を利用してと促されるようですが、過去に災害対応をした事がある業者さんと、未経験の業者さんだと全く異なる見積もりが出てくるそうです。
今回の水害の場合には、壊さなくて大丈夫と言われていた壁や床から、後になってカビが生えてきたとか、、、そんなの怖すぎですよね。
普段のリフォームとは大きく異なりますので、災害対応の経験がある業者さんかどうかを確認するように心がけましょう。経験が乏しそうであれば、災害経験のある方に修繕した方が良い箇所などのアドバイスを頂いた上で、工事を依頼しましょう!
④書類作成の激務は覚悟を決める
補助金を申請をするにあたり、書類作成は自分たちで行わなければなりません。これがとにかく大変で、夜中まで作業していたそうです。
自治体の職員さんは、提出が必要な書類について教えてくれます。が、どう書けばいいか? どういった内容の資料を用意すればよいのか? といった具体的なアドバイスまでは無いのが通常。その理由は、自分たちの市区町村が行っている補助金ではないため、自分たちで判断ができないからだと推察されます。
被害が大きければ大きいほど、書類作成は激務となりますので、覚悟を決めて向き合う必要があるそうです。
⑤法律の専門家に相談しよう
補助金が支払われれば、それは復旧・復興に向けて非常に重要なサポートになりますが、問題も。
それは、「どんな事に対して、いくら支払われるのかがわからない」こと。支払われる内容が分からないし、支払われる金額も分からないので、なかなか工事を進めることができず復旧まで余計に時間が必要となるかもしれません。
激甚災害に認定されるかどうかでも補助率が変わったり、補助できる項目が変わったりするとか、しないとか。補助金の交付要綱読んでも、呪文のようで良く分かりませんでした、、、
災害は発生すると、災害対応に詳しい弁護士さんが無料相談を行っている場合もあるので、そういった機会は逃さずに相談してみましょう。
災害の事前の対策(水害編)

事前にできることを行っていないと、被害が甚大になり、もう手に入らない物を失ってしまったり、復旧までのタスクが増えてしまいます。「被災前に戻れるなら・・・」というお話しをまとめます。
①データ化する
書類、写真、アルバムをデータ化して、クラウドに保存しておくべきだった。つつみ幼稚園では、たくさんの物が流されたり、濡れて見れなくなってしまったそうです。最低でも、高いところに保管しておけば良かったと仰っていました。
昔の行事の書類がダメになったので、新しく作り直さないといけなくなったなんて話もありました。データ化も手間ですが、作り直すよりもよっぽど良いかもしれません。頑張って、重い腰を上げてみてはどうでしょうか?
②コンセントの位置を高くする
コンセントの位置を高くしておけば、床上浸水しても電気配線の被害を免れられるので、被害の軽減が図れます。リフォームをする予定があれば、1階だけでもコンセント位置を高くできないか検討してみてください。
被災した後の復旧工事でコンセントの位置を高くすると、それはグレードアップになるため、補助金が対象外になるといった謎のルールがあるので注意。ハードルは高いですが事前にできると良いですね。
③近隣の幼稚園との交流
つつみ幼稚園では、被災後しばらくの間、他の園の教室をお借りして園生活を送ることになりました。何をするにも、何かを借りるにも確認しながらの保育だったので、お互いが気を遣いながらの園生活だったそうです。
「場所を貸していただいた施設の方々には感謝しかありません」と千葉先生は仰いますが、同時に、普段から少しでも交流をして、困った時に「助けて」と言える関係を構築しておけば良かったとも。
同じ業界の方々が普段から繋がっていることは、防災に限らず意味があると思いますので、普段から交流の機会を作ってみてはいかがでしょうか?
④保険の見直し
補償額が足らずにちゃんと支払われない保険になっていたので、見直しをすれば良かった、というお話もありました。
特に、この数年は建築費が高騰しています。設定している補償額が足りないと、満足できる金額が受け取れない可能性があるので、こちらも注意が必要です。
ただ、激甚災害の場合、保険金が貰えた分は補助金を返金しないといけないそうです。詳細に書くと、補助金は損害額の3/4までの補償なので、1/4は自己負担。保険金が支払われると自己負担の削減に繋がることになります。
復旧までのポイント

復旧にあたり、重要だと感じた点を教えてもらいました。
①ゴミの捨て方
事業用のゴミは家庭ゴミと異なり、災害廃棄物として処分ができません。ただ、自治体によって扱いが異なる場合があるようです。
東日本大震災等、いくつかの激甚災害では事業用のゴミも国の補助対象になったことがあるそうです。そのような措置が行われた場合には、事業用のゴミも市区町村が処理をしてくれますので、写真を撮った上で、急いで処分することをオススメします。
②ボランティアさんの選別
被災をすると、ありがたいことにたくさんの災害ボランティア団体さんたちが助けに来てくれます。ただ、その中にはボランティア団体と名乗る怪しい人も、、、
名刺を貰ったら、どのような活動をしてきているのかSNSなどで調べましょう。そして、信頼できるボランティア団体さんを見つけたら、その団体とつながりのある団体は信頼できる。そう考えれば良いそうです。
※今回、助けていただいた団体一覧は後述します。
③水害の復旧は覚悟を決めて
床上浸水などの場合、綺麗に乾かせばまだまだ使えると思っていた壁などから、時間が経ってからカビが生えてくることがたくさんあったそうです。それは、壁の裏側や壁の中にある断熱材などにカビが生え、それが次第に表に出てくるから。
災害復旧の経験が少ない工務店さんよりも、たくさんの経験を積んできているボランティア団体さんの見立ての方が頼りになったそうです。
まだ使えると思うけど、、、踏ん切りがつかない時には、経験豊富なボランティアさんにアドバイスを求めましょう。
④補助金以外の資金調達
補助金や募金の他に、クラウドファンディングを利用した資金調達も検討しましょう。
一部のクラウドファンディングでは、災害復興などの場合には、手数料が無料で実施が可能となっています。
クラウドファンディングに挑戦しようと思ったら、その全てを自分たちで行おうとはせず、誰かに助けを求めてみるのも良い方法です。クラウドファンディングを経験しているボランティア団体もあるようなので、そういったアドバイスも貰えないか聞いてみても良いかもしれません。
後記
これまで、「幼稚園」「保育園」と呼んできましたが、それは正確な表現では無かったり、もっと細分化されていることを知りました。保育園は正式には保育所と呼ぶそうで、幼保連携型認定こども園や幼稚園型認定こども園という形態の園もあります。
その内、幼稚園だけは文部科学省の管轄で、保育所や認定こども園(幼稚園型も含む)はこども家庭庁でした。
管轄が異なるので、対象となる補助金も異なります。
- 幼稚園・小学校など:学校施設の災害復旧事業(正式名称かどうか、ちょっと怪しい)
- 保育所・認定こども園など:児童福祉施設等災害復旧費国庫補助金
今回インタビューさせていただいたつつみ幼稚園は、園の中で幼稚園部と保育園部で別れているので、割合に応じてそれぞれの補助金をもらったようです。もう、ややこしい。
インタビューを伺って、補助金について私も少し学ばないと記事が書けないと思い、補助金の交付要領を読みました。そして、分からないところはこども家庭庁や文部科学省に問い合わせてみましたが、かなり雑な扱いを受けました。「読めば分かるでしょ?」的な。役人にはサービス精神って無いのかな?一般人が読んで分かる交付要領にしないとダメだな、、、とか思わないのでしょうか?
その、児童福祉施設等災害復旧費国庫補助金の交付要綱にはこう記載されています。
「児童福祉施設等災害復旧費国庫補助金は(中略)暴風、洪水、高潮、地震、その他の異常な自然現象により被害を受けた施設の災害復旧に関し、こども家庭庁長官に協議して承認を得た災害復旧事業に要する費用の一部を補助することにより、災害の速やかな復旧を図り、もつて施設入所者等の福祉を確保することを目的とする」
補助金をいただければ、復旧の後押しになります。ただ、それによるストレスと労力は相当なもの。速やかな復旧どころか、補助金申請することでより多くの時間がかかってしまう。そんな現行制度を是非とも見直してもらいたいものです。
しかし、災害後の速やかな復旧とお役所仕事は、きっと相性が悪いのでしょう。正確性や公平性を大事にするのは悪いことではありませんが、とにかく遅い。今の日本の行政の在り方だと、それを心して被災するしかなさそうです。
そんな中でも、「幼稚園の2階で保育を再開しよう! と決め、子どもが登園してからは職員たちも元気になって、楽しく復旧できました」と語る幼稚園の先生たちは、とても素敵で心強く感じました。
つつみ幼稚園を助けてくれたボランティア団体一覧
つつみ幼稚園の復旧を支援した、つつみ幼稚園曰く信頼できるボランティアさん一覧です。(順不同)
もしも被災をしてしまったら、自分から連絡をしてアドバイスも求めても良いかもしれません。
- 四番隊:https://yonbantai.com/
- CONNECT:https://connect-project.jp/contents/connect
- セイブザヒロシマ:https://sth20140824.jimdofree.com/
- OPEN JAPAN:https://openjapan.net/
- チームふじさん:https://www.facebook.com/p/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%BE%A9%E6%97%A7%E6%94%AF%E6%8F%B4-%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%B5%E3%81%98%E3%81%95%E3%82%93-100084487868470/
- ADRA Japan:https://www.adrajpn.org/
- 茨城NPOセンター・コモンズ:https://www.npocommons.org/
- 騎馬武者ロック運営チーム:https://www.facebook.com/kibamusha
抜けている団体さんがいたらごめんなさい。ご連絡いただければ、確認の上、追記致します。













