Now Loading

2016.08.18 ジモコロ熊本復興ツアーに参加して感じた、黒川温泉を襲った風評被害の正体を考える

こんにちは。未来防災課のさいとうです。

熊本・大分を襲った、平成28年熊本地震。最大震度は7を計測し、大きな被害をもたらしました。

地震による被害は、地震の揺れによる倒壊などを一次的な損害だとするなら、その後に経済がマヒすることで二次的損害も発生します。今回は、この二次的損害について考えてみました。

考えるきっかけをくれたのは、こちらジモコロ熊本復興ツアーです。


【熊本復興支援イベント】黒川温泉に100人集めて「お金を落として」「情報発信しよう」

熊本県阿蘇郡南小国町にある黒川温泉は、市内から北東方面に70キロ(車で約2時間)ほどのところにある日本屈指の温泉街ですが、地震の後から旅行客のキャンセルが相次ぎ、その数は40,000人を超え、推定被害額は約10億円にもなっているとのこと。

入ってくるはずだった10億ってお金が、パッと消えて存続出来るもんなの!? 想像出来ないけど、きっとこれは由々しき事態。少しでも力になれればと未来防災課の2人で参加することに決めました。

今、熊本旅行をするという事

熊本に旅行する。

そう決めると、家族からの心配のされ方が凄かった。

「どんなところに泊まるの?」「宿泊場所は被害に合ってないの?」「土砂崩れは大丈夫?(ちょうどその頃、梅雨の雨で九州地方は土砂崩れが頻発していた)」

何でわざわざ危険な場所に行くの? それが家族の本音だったと思います。

それなら、ちゃんと準備をして乗り込もう

  • ヘルメット
  • ゴーグル
  • 軍手
  • ヘッドライト
  • マスク
  • 多めの着替え
  • 水と非常時の食料

+αの持ち物でいつもよりカバンがパンパン。

準備は万端。いざ熊本へ!!

僕とタケナカはツアーとは少し別行動で、熊本空港からレンタカーを借りて熊本を回りながら黒川温泉を目指しました。

今回の地震で震度7を計測した益城町は、地震の揺れがいかに強かったのかが一目で分かる状態でした。

一区画全ての家が倒壊しているような、凄惨な状況。地震から2か月半ほど経った今も、その一区画を遮断し、そこだけ地震の直後から時が止まったかのような世界がそこにはありました。

熊本市では、倒壊こそしていないながらも赤紙が貼られ、立ち入りの出来ない建物がところどころにあったし、屋根にはブルーシートがかけられた家が何軒も並んでいました。飛行機から見えた青い屋根はこれだったんだと、その時になって気づきました。

そんな市内から約2時間車を走らせれば、今回の目的地である黒川温泉に到着します。

117人で宴会! 経験した事のない豪華なビュッフェでおもてなし

黒川温泉に到着すると、ツアーのみんなは既に宴会の真っ最中!! 117人が集まっての宴会ってカオスとしか言えないんだけど、そんな状況なのに、ちゃんとしたおもてなしを受けた。ホスピタリティがスゴイ。それに、もの凄い量と種類のご馳走。

馬刺し、辛子レンコンといったTHE熊本料理の他にも、お刺身やロースビーフ、デザートのケーキまであるビュッフェスタイル。

今まで経験したどのビュッフェよりも品数が多かった。物流ではそれほど困ってる無いんだなぁって感じた。と同時に、この料理を振る舞う機会だけが無くなっちゃってるんだなぁって。

それって、とっても悔しいことだと思うんだよね。歯痒いだろうなぁ。

でも、今日はたくさんの人で溢れています。

「復興」というテーマで熊本に集まってみたけど、美味しい料理に囲まれて、そこにあるのは笑顔でした。

辛い思いをはねのけるように、とにかく、とにかく、とにかく頑張る復興もあれば、楽しく飲んで、食べて過ごす復興の方法もあるんだなぁって。。。前向きな復興への道のりは、誰もが心地よく、誰もが元気になれるのかな、なんて思いを巡らす夜になりました。

熊本支援復興ツアー 2日目

2日目はちゃんとツアーに混じって、楽しませて頂きます。

ツアーは黒川温泉と南小国町の強力で6種類のアクティビティが用意されていました。

  • 農業体験
  • 林業体験
  • そうめん流し大会
  • 自然を散策
  • サイクリング
  • 郷土料理体験

普段はなかなか体験できないアクティビティが目白押し!

未来防災課の面々は揃ってサイクリングを選択。

マウンテンバイクにまたがり、スタート。最初の曲がり角を曲がると・・・

いきなり、超気持ちいいサイクリングロードが・・・。おもわず歓声が上がる。

上り坂も、テンションが上がっているボクらには平坦な道でしかありません。

遠くには、牛も。

熊本は美味しい牛もあるんだそうです。牛を目の前にして言うのもアレですが、美味しい牛、食べたいですねー。

「絶対このアクティビティが一番最高だった」と、年甲斐にも無く興奮するみんな。今日の復興も笑顔だらけ。


イクリングも終盤に差し掛かり、サイクリングのレクチャーをしてくれた地元の方に、ずっと感じていた疑問を聞いてみました。

『宿泊した宿もそうでしたけど、地震の爪痕が全く感じられないですね?』

「そうですね。この辺りは震度4程度のものだったので、特に被害は出てないんですよね」

・・・

・・・

・・・

「震度4程度!?」

えっ!? って思った。

たった震度4?? って・・・。

震度4で10億損失!? 風評被害の恐ろしさ

ネットで調べてみると、黒川温泉のある南小国町の最大震度は震度5強でした(南小国町でも場所が違えば震度は違うので、多少の差はあるよね)。3.11の震災でボクの住む東京の震度が5強だったので、それと同じくらいの揺れだった事になります。

ボクが東京で感じていた熊本大地震は、熊本城の石垣が崩壊したり、阿蘇神社の拝殿の倒壊、阿蘇大橋の崩落などなど、強い揺れによって甚大な被害が熊本県と大分県を襲ったものでした。

メディアに映し出されるショッキングな映像から、熊本に同じような印象を抱いたいた人も多いのではないでしょうか?

でも、実際に来てみたら、黒川温泉では建物が倒壊していたり、ビニールシートがかぶせてある建物は見当たりません。

それもそのはず。最大でも震度5強なら、物理的損害はほぼゼロと言ってもいいでしょう。

「だからこそ、怖い」って思いました。

危険な場所なら、観光客の足が遠のくのは理解できます。でも、今回の黒川温泉のように、大した被害なんてほぼ無いのに、変わらずに温泉街は元気なのに、いつも通りのおもてなしが出来るのに、風評被害で客足だけがぱったりと途絶えてしまうんです。

風評被害を生み出しているのは誰か!?

前述にもありますが、今回黒川温泉を襲った地震の震度は5強。それは、3.11の東京同じ。

でもボクは今回熊本に来るまで、あの時の東京より、今の熊本の黒川温泉の方がよっぽど危険だと思っていました。

そう思ってしまった原因はドコにあるのか?

世論では「テレビなどのメディアが、被害ばかりを報道するから」だといった意見も聞かれます。確かに、テレビや新聞などのメディアの力は依然として強く、毎日繰り返される被災地の状況を見ると、どうしても今は「熊本=危険」と感じてしまうのでしょう。

だとすると、やはり風評被害とはいうのは、メディアが創り出しているのでしょうか。

今回、ボクが黒川温泉に来て感じた感想は、そうではありませんでした。

結論から言うと、風評被害を生みだしているのは、自分自身。結局、自分の「知識不足」「興味の薄さ」が原因だと感じました。

例えばボクの場合ですが、

  • 熊本地震という名称から、熊本全体を大きな揺れが襲ったと思っていた
  • 震源地付近と、震源地から少しから離れた場所の被害がこれほどまでに差があるとは思わなかった
  • 地名を言われても地理的な場所が想像出来ず、熊本県であることだけで危険な場所だと感じていた

今の時代、何かに興味を持てば、自分で簡単に調べる事が出来ます。

事前に黒川温泉の地震の被害を調べたり、地震当日の震度を調べたり、震源地からの距離を調べれば、この旅行に防災グッズを山のように用意する必要は無かったと気付けたでしょう。家族にも安全な場所だから大丈夫だとちゃんと伝えて来れたでしょう。なのに、黒川温泉に来るまで「余震が怖いからヘルメットを持っていこう」という検討違いの行動をしています。

でもそれは、ボクの家族も同じですし、今回ツアーに参加したメンバーの中にも、同じような考えの人がいたと思います。

「熊本県だから、きっと今は危険だろう」って。

しかし、これは思い込みでした。

自分で大して調べる事も無く、熊本県を一括りにして、今は危険だろう・・・と考える人が多いから、積もり積もって10億円もの経済損失が生まれてしまったのではないでしょうか。

そう。風評被害を生み出しているのは、実は、みなさん一人ひとり。なのかもしれません。

まとめ

「被害の大きかったところを見ると、どうしても自粛しちゃうんです」

これは、サイクリングのゴールポイントから、黒川温泉まで乗せてもらった車の中で現地の方から聞いた言葉。

確かにそう。確かに自粛しちゃう。それがきっと普通です。でも、ボクらは3.11からこんな事を学んでいたはずです。

「自粛からは何も生まれない」って。

3.11の年、東京湾の花火大会が自粛により中止されました。この花火を買い取って、同時に東北10か所で復興と鎮魂の花火を上げたLIGHT UP NIPPON という団体があります。

花火は自然と人の顔を上に向ける力があります。彼らは、何も生み出さない自粛の流れを、復興に向けた応援のパワーに変えました。

東日本大震災、熊本地震を経験して、ボクらは更に成長しなければなりません。

自粛からもう一歩踏み込んで、矢面に立ってでも、自分たちは元気だ!自分たちの町は安全だ! だから、普段通り遊びにおいで! と正直に声を上げる人たちがきっと復興には必要だと感じました。

自粛するくらいなら、元気な人たちが経済を回せるだけ回して、そして得られた利益を本当に困っている人たちに還元してはどうでしょうか。同じ地震で被災した者どうしだからこそ、被害の状況をいつも近くで感じている者だからこそ、継続的な熱量の高い支援が出来るようにも思います。

風評被害との闘いは、多くの個人の心の中にある「なんとなく危険だ」という感情との闘いです。

そんな見えない敵に対して、自分たちは元気だ!と声高らかに頑張っている人たちに興味を持つ人が増え、メディアも取り上げ、ポジティブな復興支援の輪が広がるような日本になれば、いつか来る次の震災に対して、大きな力を発揮出来るのではないでしょうか。

そして、その力を発揮した時の復興の道のりの中に、ジモコロ熊本復興ツアーのような、笑顔の溢れる瞬間が必ずあるのだと期待したいと思います。

このツアーを詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみて下さい。

自腹で情報発信! 熊本震災支援イベントに「100人のライター」が集まった結果 – どこでも地元メディア「ジモコロ」

斎藤啓之

執筆者:斎藤啓之

1980年生まれ
両親の出逢いはテニスコート。男3人兄弟の長男で、3世代で暮らし、友だちから「サザエさんのウチみたい」だと言われるような家庭で育つ。
料理は全く出来ないが調理師免許を持っており、味噌が変わると判る味覚をもつ。
剣道の有段者なので、棒で人を叩くと逮捕される。
趣味は、高3の秋から始めた野球。甲子園を目指したことの無い野球人。
ほとんどの人にA型?と聞かれるO型。

最近書いた記事

コンテンツの説明書

コンテンツの一覧

よく読まれている記事

SNSもCHECK!

twitter facebook