
こんにちは。未来防災課のさいとうです。
「大きな地震があると、必ず火山が連動して噴火する」
なんて話を耳にします。
東日本大震災以降、御嶽山の噴火や箱根山の噴火警戒レベルの引き上げから、富士山の噴火を懸念している人もいるのではないでしょうか?
少し離れた関東圏に住んでいると「富士山が噴火しても噴石も飛んでこないし、溶岩が流れてくるわけでもないし・・・、灰が降ってくるぐらいでしょ!? じゃあ、たいした事ないんじゃない?」
と、思っている人が大半じゃないでしょうか?
でも、調べてみると、事態はかなり深刻でした・・・
それでは、実際に富士山が噴火したらどのような事態が想定されているのでしょうか?その時に、私たちがとるべき行動とは??
気になるところを、探って参りましょう!!
富士山の噴火で考えられる被害想定
富士山が噴火した場合、ハザードマップを参考にすると東京や千葉に2~10センチの火山灰が降り積もる可能性があるようです。
「2~10センチか。たいしたことないな。」
そう思うべからず。
調べてみると、それだけで絶望的な被害が発生するやもしれないのです。
では、どの程度の被害が考えられるのでしょうか? いくつかの項目に分けてまとめました。
1.停電が発生する??
水分を含んだ火山灰は電気を通してしまうので、送電線に降灰すれば高圧線が漏電して停電を引き起こす。
●実際に、桜島の噴火ではわずかな降灰で停電が起こっている。
出典:http://www.j-cast.com/2013/05/21175569.html?p=all
平成14年3月、内閣府の富士山噴火による被害想定調査報告書でも、
●電力施設への降灰の影響の一つには、送電機器の一つである碍子に灰が付着し、降雨時に濡れて漏洩電流が流れ、事故 防止のために電力供給がストップするものがある。
出典:http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20121107siryo2.pdf
どうやら、停電はあるとされています。
さて、では電力会社はどう考えているのでしょうか?
●降灰では、停電は発生しないと思われる。理由は、三宅島噴火や有珠山噴火などでも降灰の影響による停電の経験がない。
●土が電気設備に泥のように張りつくが、これによる 停電被害の経験がない。桜島でも降灰を理由に大停電が起こった経験はない。
●泥流などで電柱などが被害を受け、停電の可能性はある。
●東京23区は、変電所などの電気設備はすべて地下なので、灰の影響で発電に問題は生じない。
出典:http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-houkokusho-rist-fujisan-shakaitekieikyo01.pdf
う~ん。
桜島の噴火で停電が起きているという話しもあるのに、電力会社は大停電が起こった経験はないといっている。まさかこれは「停電はあったけど、大停電ではない」ということでしょうか??
サイトによっては、火力発電所は稼働できない的な事が書いてあるものもありますが、変電所が地下にあるとのことなら、稼働できないという理由に対しての対策はしてあるようですね。
降灰の影響で停電をするのかどうかは、かなり不透明ですが、そもそも、福島の原発事故以来、電力会社が何と説明しても信用できないっていうか、想定が常に甘すぎなんじゃないかってイメージが拭えないんですよね。
災害は自然相手なので、想定外ってことが起こると考えておいた方がベターだと思います。なので、防災の観点で言えば、電気は使えなくなることを想定して備えるべきなんでしょうね。
2.水の問題
●水道は、水源地に降り注ぐ火山灰の影響で給水停止になる可能性がある。内閣府は、200万人前後が水道を利用できない事態を想定している。
出典:http://news.ameba.jp/20130523-261/
ぎょぎょ、と思うかもしれませんが、200万人と言えば、本当に富士山の近くの地域に限定されているように感じます。
東京や千葉にも降灰はありますが、水の影響は甚大ではないと政府は考えているとも読み取れそうです。
●火山灰を経験したことのない大勢の人が、無知のまま火山灰を水と一緒に流してしまうと、トイレなどの下水が使えなくなる。
出典:http://xn--y7r30df9c5sa921f.com/happen/%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E5%B1%B1%E5%99%B4%E7%81%AB%E3%81%AE%E8%A2%AB%E5%AE%B3-%E3%80%80/
いくら給水は大丈夫でも、排水がダメなら水は利用できないってことになると思いますが、その辺、ちゃんと整備出来ているのかどうか。。。
3.交通網は??
A.自動車
●道路上に湿潤時5mm、乾燥時2cmの降灰が堆積するとスリップ発生により通行不能となった。
出典:http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20121107siryo2.pdf●舞いあがった火山灰は、自動車の吸気口から吸い込まれ、エンジンのフィルターを 詰まらせ、道路には走行不能となった多数の自動車が立ち往生する可能性が高 い。
出典:http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201307221.pdf
どうやら、火山灰は私たちが想像する普通の灰とはだいぶ異なっていて、とても厄介。降灰だけで、車で移動するのはほぼ不可能な状態になってしまうかも。
B.鉄道
鹿児島市交通局への電話ヒアリングによると
●降灰が原因で運行停止になったことは数年ない。
出典:http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20121107siryo2.pdf
とのこと。
ふーん、大丈夫そうじゃん、と思うなかれ。
JR東日本の安全部の方の認識は、そんなに甘いもんじゃないそうです。
●JR九州で体験している桜島と富士山の噴火では、降灰の範囲がまったく異なる。
●北海道の有珠山では、 正常運転まで被害の大きい所では1か月以上かかっている。首都 圏でも被害が大きくなったら、それ以上にはなるだろうと予測される。
●微量の降灰があった段階で鉄道は運行停止。首都圏鉄道、新幹線、中央線、東海道線など広範に影響。
●降灰中あるいは灰がレールに積もっている状態では、さまざまな事故が生じる可能性があるため、動力的に運行可能であっても運転しない。
●有視界運転のため、信号機が見えなかったら運転できない。火山灰が降り続いてる間ほとんど列車の運行は できない。
出典:http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-houkokusho-rist-fujisan-shakaitekieikyo01.pdf
ありがたいことに、安全第一の考えでサービスを行ってくれているので、限りなく100%に近い安全が確保されない限り、運行はしないようです。
その代わり、電車にはまず乗れないと考えた方が良さそうですね。
C.飛行機
火山灰よりも高いところを飛んでそうだから大丈夫かと思いきや、
●富士山の噴火によって最も被害を被る乗り物は飛行機。少量の火山灰でも首都圏の旅客と物流を担う羽田空港・成田空港が長期間にわたって 使用不能となる恐れ。
出典:http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201307221.pdf
なぜ、使用不能になるかと言うと、火山灰の粒子が飛行機やヘリコプターのエンジンを止めてしまうからだそう。
●航空路における降灰の存在、滑走路における降灰の存在、いずれかの状況があっただけでも 航空運行はできない。
出典:http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201307221.pdf
残念ながら飛行機も、完全にマヒすると考えた方がよさそうです。
4.物流
●降灰時には、危険地域の配送は行われない。
●鉄道、自動車、航空機などの交通機能マヒによって、物流網が完全にマヒするので、原材料、製造物、食料品などを含めあらゆる物流システムが停止する。
出典:http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-houkokusho-rist-fujisan-shakaitekieikyo01.pdf
降灰が続く限り物流がストップするのであれば、東日本大震災時よりも長期間さまざまな物が手にはいらない状況が続く可能性が考えられます。
物資の輸送はどうするのでしょう? いくら待っていても、物資は届かないかもしれません。
5.健康被害
●有珠山の降灰では、2cm以上の地域で目・鼻・咽・気管支の異常等、肉体的障害が報告。雲仙普賢岳の降灰により島原市では、市民の約66%が健康面への影響を受けた。うち眼の痛み約8割、喉の異常が約6割
出典:http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20121107siryo2.pdf●角膜剥離を起こしてしまうため、コンタクトレンズを外す。
●火山灰を吸い込むと気管や肺が傷つけられ、幼児や高齢者の方は呼吸器系の病気になる可能性がある。
●火山灰に火山ガスが付着している場合には皮膚炎を起こすことがあり、皮膚の弱い方は肌を露出させない等の注意が必要
出典:http://hun-ka.com/item/setbasic/
一旦灰が降り始めたら、ゴーグルやマスクは必須。もってますか? 数には余裕がありますか? 物流がストップしているから、売り切れた手に入りません。
まとめ
この記事を書くのにいろいろな資料を読みましたが、正直甘く見てました火山灰、ごめんなさい。普通の灰と全然違うんですね。
そういえば、震災がくるまで津波って大きな波だと思ってたのを思い出しました。
漢字のイメージが先行しちゃうので、本当のところは調べてみないと勘違いしちゃいますね。怖いなぁ。
車もダメ、電車もダメ、飛行機もダメ。逃げられないし、物も入って来ない。正に陸の孤島。
会社にも行けないし、行けたとしてもいったい何が出来るでしょう? パソコンのような静電気を帯びているものは、灰を寄せ付けて壊れてしまうと危惧されているようなので、使えません。
たかだか2cm積もるだけでしょ? と思うかも知れませんが、雪と違って溶けないし、水道管が詰まるから水で流せません。
火山灰が東京全域に1cm積もったら東日本大震災で発生したがれき総量の約14倍ほどになるそうです。実は、ものスゴい量なんです。さて、どこに捨てるんでしょう? というか、処分するまで時間かかりそ~。
こんな状況で生活をするのが嫌なら、方法は1つ。灰が降り始める前に避難を終えるしかないでしょう。
幸い、噴火は地震と違い事前にある程度予兆があると言われています。御嶽山のように、予兆があっても見逃していたらダメですが、富士山ともなると警戒レベルが違うはずなので、そこは信じたいですよね。
だから「もういつ噴火するか分からない」となったら、その時点で避難をする。これがベスト。遅くても、噴火直後に避難ができれば、灰が降ってくる前に逃げられる可能性もあるので、その時の判断はソッコーでしましょう。ニュースを見ていたら間に合いません。
「避難なんてしてられないよ、普段の生活があるんだから」と思いますが、冷静に考えてみて下さい。その日常生活が全てマヒしてしまうんです。
ここにいても今の生活が続けられないなら、思い切って避難してみませんか?
一旦避難して、タイミングをみて戻ってくることって、難しいでしょうか? きっと、避難のタイミングを逃してからの避難の方が、ずっと難しく、大変な思いをするはずです。
大変な決断ですが、猶予は富士山が噴火するまで。今から想定をしておくだけでも、その時には大きな差が生まれるはずです。
せめて、家族で話し合っておくだけでも、その時の行動スピードは全然違ってくるのではないでしょうか?